第14回
02/12/06号
ゲーム制作を邪魔する「クソゲー力」を
提唱した旧友・海道賢仁の特長とは…?
 ――私、只今、修羅場の真っ最中に居ます。

14年の制作者人生の中で、生命の危険を感じるほど忙しいのは、今回で2度目です。もう2ヶ月も自宅のベッドで寝ていません。睡眠のほとんどが、机に突っ伏して細切れに数分間「気絶」するだけという極限状況。そのため、1日に数十回〜数百回も夢を見ます(よりにもよって、仕事している夢を!)。それはあたかも、夢とうつつ現実の2つの人生を並行して生きているような感覚(錯覚)で、誇張ではなく、自分が今、寝ているのか起きているのかすらおぼつか覚束ない状態です。前号に私へのインタビューが載っていましたが、モーロー朦朧とした顔写真がその証し。
今週のメモ:これが、ゲーム業界のごく一般的な労働条件です(本当)。
――でもね、こういう時ほど出るんですよ、「火事場の馬鹿力」的な、凄いアイデアが!

*  *  *

 さて前回、「クソゲー力(くそげー・ぢから)」について触れたところ、思わぬ反響がありました。大別すると、「解る解る!」という肯定的な反応と、逆に否定的な揶揄・疑問・無視などの反応。でも、私は敢えて断言します。呼び方はどうあれ、「開発中のゲームをつまらなくしようとする見えない力」は在る、と。それを感じた事のない人間は、よっぽど幸運な人か、単なる下っ端(ぺーぺー)か、あるいは――制作者として不適格か。

 例えば、あの宮本茂さんでさえ、「マザー3」開発中止を発表した際に「ゲームなんて、本当は完成しないものなんですよ」と仰られていたと記憶します。私はその発言の裏に、クソゲー力と同種の考えを受け入れる宮本さんの姿を見ました! そして、こうも思ったものです「ああ宮本さんも我々と同じく、クソゲー力に対して足掻いているのだなあ――そして屈する場合もあるのだなあ」と。

*  *  *

 「クソゲー力」という概念の提唱者である海道賢仁氏は私の旧い友人で、最近では「ICO」や「サルゲッチュ」で重要な役割を果たしていますが、古巣のタイトー時代には「ぱぱら快刀」と称して、「ソニックブラストマン」「キャメルトライ」「ナイトストライカー」など、様々なジャンルで名作を生み出した、一種のオールラウンダーと云える才人です。
そんな彼の特長を一言で表すなら――「いつも眠っている」これに尽きます。

 彼の職場に行くと、椅子にもたれて起用に寝ています――いつも決まって!
 彼が運転する車に乗ると、運転中に眠ってしまいます――いつも決まって!

 私は海道が、小説家の阿佐田哲也氏などと同じく、嗜眠症(ナルコレプシー)なのではないかと診ています。これはいわゆる「居眠り病」で、時と場所を選ばず瞬間的に眠ってしまう睡眠障害。そして特筆すべきは、覚醒状態から即座にレムREM睡眠=大脳が活動して「夢を見る」睡眠に移行すること。
即ち――私が今味わっている修羅場を、海道は常に味わっているということです!

なるほどそれなら、海道が凄いアイデアを出すのも当然。だって、彼の脳は常に「臨戦態勢」なんですから。
教訓:極限状況で凄いアイデアを出せ!

新宿のタイトーステーション(ゲーセン)でのロケテストのトキ、
ゲーム筐体の椅子で居眠りを始めちゃったのが監視カメラで記録されていて、
タイトー社内で話題にされた話とか、海道の居眠り話は枚挙にいとまナシ。

例えば、仲間内では有名な話だけど、あらためてここに書かせていただくと、
彼の運転でドライブへ行ったトキのコト。深夜に高速道路を走っていたら、
なんだかクルマがフラついてる。ルームミラーで海道の顔をみると、目が半開きの仏顔。
やばいかな?と思っていたら、しまいには蛇行を始め――
――他のクルマに突っ込んで行こうとするじゃないの!

相×「海道、危ない!」
海道「…今のマジでヤバかった…」

このトキだけの話じゃなくて、毎回こうなのね、実は。
例えば、ミソカツでも食い行っかー! とか云って、ふらり岐阜にドライヴしちゃうトキでも、
ラーメンでも食い行っかー! とか云って、ふらり喜多方にドライヴしちゃうトキでも、
蕎麦でも食い行っかー! とか云って、ふらり戸隠にドライヴしちゃうトキでも。

ちなみに、海道はウチの母親にウケが良いです。
一度だけしか連れていってないのにねえ。
母性本能をくすぐる何かがあるのだろうか?(笑)


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