第39回
03/12/26号
今回の嘘六百は、ドリマガに掲載不可能!
はたしてその内容とは……?
今回の原稿では、前回の続きは一旦中断して、とある雑誌レビューについて苦言を呈させていただく。

自作についてのレビューに対してあーだこーだ云うのは、制作者として非常にカッコワルイ態度ではあるが、なあに俺は元々カッコワルイ芸風なので構やしない。遠慮会釈なく苦言を呈させていただこう。



 先週、ゲーム好きなら誰でも知ってる「有名クロスレビュー誌」の校正用原稿がFAXで届いた。既に発売になっている雑誌だから、ここで点数を公表しても差し支えなかろう。ラチェット&クランク2に対して、4人のレビュアーが付けた点数は、8/8/8/7で、合計31点のシルバー殿堂入りだという。

――ちょっと待った。確か前作はゴールド殿堂入りで、メダルとシャンパンを戴いた筈だし、「2」では、そこから更に作り込んだ自負もある。新規要素も満載だ。何故、点数が下がるのか? ひょっとしたら、自分らで見落とした欠陥でもあったのか!?

――そう思い、レビューの本文を読んでみたのだが、いやはやなんとも呆れてしまった。以下、ファミ通12/19号から引用させていただこう。

あるレビュアー曰く、「カメラアングルはアクションの邪魔にならないような動きで、プレイ中にストレスを感じることはまずない」
ところが、その下のレビュアーはこう宣うのだ「視点が理不尽で――」

どっちやねん!?

また、あるレビュアーは「誰でも触れる敷居の低さと間口の広さがいい感じなのだ」と云い、その2つ下のレビュアーは「前作に比べて若干、初心者に厳しくなった感じ」だと来た。

混乱するっちゅーねん!

クロスレビューというものは元来、嗜好・熟練度の違う複数の選者=複数の評価軸によって、ゲームを多面的に評価すべきものだろう。また、点数を付けるからには、バイヤーズガイド買い物案内として、様々な読者に指標を与えるべきものでもある。だから、ある選者が「好き」と云い、ところが別の選者が「嫌い」と云うのならば、それなりに納得は出来る。

だが、同じ評価軸で好評不評がバラつくのは何故なのか?

前述のレビューを読んで、初心者は、自分に向いたソフトなのかどうなのか、決して判断できないだろう。これは、何も書いてないに等しい。というか、読者を混乱させるだけだ。

それこそ、雑誌として「視点が理不尽」なのではありませんか、ファミ通さん?



思うに、もっと有力なソフト――例えばFF12とかだったら、こんなに理不尽でユーザーを混乱させるような書き方はしないんだと思う。評価の正当性、ひいては雑誌の信憑性を疑われちゃうからね。結局、こうした「視点が理不尽な」レビューから読者が得られる情報は「ファミ通はラチェット2を軽んじている」それだけかもしれない。悲しい事だけど。


雑誌のレビューについて、次回、頭が冷えてから更に掘り下げてみます。

というワケで、この回はボツにされてしまいましたとさ。
理由として、ドリマガに掲載された編集ウメちゃんの文章を引用しておこう。

 こんにちは、本コーナー担当編集のウメです。
えー、今回の「嘘六百」は、作者の原稿が掲載には至らないレベルだと判断しまして、
掲載を見送らせていただきます。軽くその内容を解説しますと、今回はゲーム業界に
昔からはびこる、風習(のようなもの)がテーマだったのですが、原稿には
「ちょっとこの書き方はないだろ」という事例の引用や表現が目立っていたわけです。
しかし、氏の主張にはもっともだと肯定できる部分も多分にあり、ドリマガとしては
それを全否定するわけではありません。いつかこの題材で、ドリマガと鶴見氏の
どちらも納得の原稿を掲載することをお約束します。みなさま、今回はごめんなさい。
(ドリマガ 2003/12/26号より引用)

俺は決して「掲載に至らないレベル」だとは考えていないワケだが、
「鶴見六百が、ドリマガを使ってファミ通に喧嘩を売っている」という構図が
マズいと判断されたのであろう。論壇ではよくある話なんだけどね。
あ、いや、俺も別に、ファミ通さんに喧嘩売ってるつもりは全くなくって、
ただ――悲しかっただけ。理不尽な書かれようをされたコトが。

ちなみに、バックナンバーをご覧の方は御存知だろうが、
昨年のラチェット1の時も、同じように雑誌のレビューに苦言を呈し、
同じように原稿をボツにされているワケだ。

前回はちゃんと原稿を書き直したけど、今年は書き直さなかった。
「これがボツになるとしても、書き直さないからね!」と宣言して。
俺の、ささやかなプロテスト。

思うに、メディアに出る制作者は何故か聖人君子や分別のついた大人ばかりで、
雑誌レビューに対する不満(絶対持っているはず!)には、決して触れようとしない。
数年前に、イイノ某なる人間がファミ通に噛みついた、という僅かな例があるのみだ。
これって、良いことなんだろうか? 雑誌にとって…制作者にとって…読者にとって。


最後に、イラストの榎本俊二さんが送ってくれた応援メールを掲載して、この項を閉じよう。
(榎本さん、サンクスです!)

ちなみに今回の原稿で一番好きな箇所は
「自作についてのレビューに対してあーだこーだ云うのは、
 制作者として非常にカッコワルイ態度ではあるが、
 なあに俺は元々カッコワルイ芸風なので構やしない。」

鶴見さんのあーだこーだいうカッコワルイ芸風は『嘘六百』でかなり確立したと
私は思っています。それは世間が考えるよりも数千倍はカッコイイことなのです。
前回の『ラチェット』のときもそうだったけどボツを恐れずその瞬間瞬間のタイムリー
な血の通った原稿を編集にぶつける態度は頼もしいです。
これに懲りずにアナーキーな態度を全開し続けてください。

聖人君子でもなく、
妙に分別くさい大人でもなく、
偶像的な崇拝の対象でもなく、
権威を振りかざすでもなく――

現場でしか感じ取れないコトを、
誰はばかるコトなく体面も世間体も気にせず、
感じたまま素直に豪速球でブン投げる、
とてもとても、カッコワルイ奴――

サウイフモノニ ワタシハ ナリタヒ。


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